小泉進次郎環境相の「30年後」
【無責任な発言を大喜利にする罪】
小泉進次郎環境大臣は9月17日、除染廃棄物の最終処分にまつわる質問にこう答えました。ーー
「私の中で30年後を考えた時に、30年後の自分は何歳かなと発災直後から考えていました。だからこそ私は健康でいられれば、30年後の約束を守れるかどうかという、そこの節目を見届けることが、私はできる可能性のある政治家だと思います」
これについて、「意味不明」だの「ポエム」だのと話題になりました。担当大臣のいい加減な発言に対する怒りよりも、おもしろがられている場合のほうが多く見られるでしょう。
小泉さんは、今回の件で“大喜利”の“出題者”であるということが広く認識されました。今後は、“お題”にピッタリなことをこれからも言うにちがいない小泉さんの発言があるたびにおもしろがられるのはもちろんのこと、それにヒネリを効かせておもしろいことや気のきいたつもりのことを言おうとする言葉あそびやトンチが世間ではよく見られるようになると思います。
そしてそれは、発言を批判して弾劾するものではなく、そういうものをおもしろいものとして消費するのですから、真の問題から目をそらせる“危険な遊び”にほかなりません。
【マイナスに見えても良い宣伝】
「30年後」うんぬんは、小泉さんにとって一見マイナスに思える発言ですが、小泉さんが「怒り」の対象よりも「おもしろい」対象になっていること自体が小泉さんにはプラスでしょう。「意味不明」の発言をしても「おもしろい」こととして取りあげられれば、そのヒドさが伝わりにくくなったり緩和されたりするからです。
また、「議題設定」[注]の点から見れば、マスコミのみならず、多くの人が彼の発言を拡散してくれるのですから、小泉さんの「重要性」が否応にも高まります。いわゆるお笑い芸人を身近な人あるいは知人かのように感じている人がいるように、小泉さんに親近感を持つ人が増えてゆくでしょう。
そのような場合、重要な地位にいるはずの議員のいい加減な発言に心底の「怒り」は持ちにくいものです。父親の小泉純一郎さんが郵政を外資に売り渡したように農協を解体して外資に利便を図ろうとしている姿勢や、年金支給開始年齢75歳「提言」、日本の人口を半数に“削減”発言などなどの、アメリカをバックにした小泉さんの企みに、小泉さんに“親近感”を覚えていては気づきにくくなるのではないでしょうか。しかし、小泉さんや、小泉さんを表にたてる勢力には、そういう人々の無知は喜ばしいことです。
「30年後」発言が、小泉さんにとって、かならずしも「マイナス」にはならないゆえんです。
[注]
「議題設定」(アジェンダ設定)とは、新聞やテレビなどの報道で言及される量(何ページとか何分とか)や報道回数によって、あるテーマの重要性が決まることを言います。
マス=メディアが「あるテーマ」を何回も何回も紙面や時間をさいて報道すれば、それが「重要」な「テーマ」になり、多くの受け手もそう思うようになる、ということです。
詳しくは、下記の拙文を御覧ください。
〈お知らせ その1〉
〈お知らせ その2〉